生徒研修会
JICA東京 第3回市民参加イベント
あなたの一歩が世界を変える〜身近なところからはじめる国際協力〜
報告 東京都立三鷹高等学校 柳 由美子
日時:2005年1月29日(土)13:00〜17:30
場所:JICA東京国際センター
参加者:高校生、教員、その他多数
今年度の生徒研修会はJICA東京「市民参加イベント」と同時開催で行われました。オープニングの挨拶の後、新潟県中越大震災の時に実際に現地で活動した4人のパネリストによるパネルディスカッション「新潟県中越大震災で考えた!私の一歩で変わること」がありました。
「日頃の国際交流や地域間交流が相互扶助の精神を育むこと」「ボランティアとは開発途上国だけでなく身近な存在であること」など、市民社会における共生のあり方について、多くのことを考えるきっかけが提供されました。
参加した高校生の中には熱心にメモを取りながら話を聞いている姿も見られ、それぞれの視点からの「私の一歩」を考える機会となったようです。
その後の分科会では5つの部屋に分かれました。高校生たちは分科会Cの「異文化交流体験!JICA日系研修員との交流会」に参加し、研修員とのゲームやコミュニケーションを楽しみました。(詳細は生徒の感想を参照)
分科会後もNGO,国際機関等のブースで熱心に話を聞いたり、民族衣装体験コーナーでベトナムのアオザイを着て写真を撮ったりと、最後までイベントを満喫する姿が見受けられました。
以下は、分科会B「開発教育ワークショップ『赤道の通る国で』」の報告です。
分科会B 開発教育ワークショップ「赤道の通る国で」
南米「エクアドル」で青年海外協力隊員として2年間(2002、2003年度)農業技術の指導に携わった星野雅義氏(都立大島高校学校教諭)の活動を中心に、エクアドルの国の様子や人々の暮らしが紹介されました。参加者は40名程でした。
<スライド上映(130枚)>
2003年夏にエクアドルの星野さんを訪れた上松信義氏によるスライド上映とエクアドルの紹介
・ 首都キトの街並み・靴磨きの子供・赤道記念碑
・ 星野さんの活動地であるサントドミンゴや赤道技術大学での様子
・ 先住民コロラド族の生活
・ 日本人技術者によるマニラ麻栽培と現地労働者
・ 星野さんが親しくしていた農家アリアス家の人々 など。
<星野さんの活動体験と苦労話>
2
年間のエクアドルでの生活と農業技術者としての現地での活動の様子を苦労話も交えながら、ありのままに話していただきました。特に、南米の中でも日系人の
少ないエクアドルではアジア人に対する差別意識が強くて苦労したことや、活動の内容が理解されず農業技術の指導が思うように進まなかったことなどのリアル
な話は多くの参加者の印象に残ったようです。
2003年夏にエクアドルの星野さんを訪れたメンバーの高島さんや私も補足説明として、高山病にかかった話やガラパゴス旅行の話もさせていただきました。
<フリートーキング>
2つのグループに別れ、時間一杯行われました。
スライドや星野さんの話を通して印象に残ったこと、疑問に思ったこと、感じたこと、考えたことを自由に話してもらう形式で、参加者全員が一言ずつ発言しました。
<まとめ>
こ
の分科会を通してエクアドルという国の存在とそこで生きる人々の暮らしの一端を知り、日本との違いや関係について考えることができました。また、青年海外
協力隊員の努力の軌跡を通して、参加者一人ひとりが自分の生き方、在り方及び開発教育・国際協力について考える契機となったのではないでしょうか。
(地図と写真は在日エクアドル大使館HPから)
参加生徒の感想
今回参加して思ったこと
三鷹高校 2年 杉浦未希
このイベントに参加して本当に良かったと思います。
ま
ずパネルディスカッションではとても勉強になりました。私たちは新潟地震があったときもそうでしたが、常にかわいそうだ、気の毒だという気持ちが先にたっ
てしまいます。しかし本当に考えなければいけないのは被災者の人の気持ちです。例えば物資はたくさんのものが送られてくるそうなのですが、生ものとかはす
ぐにだめになってしまいます。そうなれば捨ててしまわなければなりません。こういうときにダンボールに「雑貨」などと書かれると一番困るそうです。詳しく
何が入っているかを書くことがとても重要なようです。
他にもボランティアで行っているのに、「私の寝る場所はどこですか?食べ物は?」と聞く人がいるようです。そんなものが被災地にあるはずがないのです。つまりただの自己満足になるにすぎなくなってしまいます。これこそ被災者の気持ちを理解しようとしていない証拠です。
コ
ミュニティで大切なことも知りました。それは「遠くの親戚より近くの他人」ということです。つまり近所の人と良くコミュニケーションをとっておくことが災
害にあったときに一番助かりやすいのです。というのは他のところから来るボランティアの人はその土地をよくわからないので近所に頼るしかないのです。最
近、近所の人とコミュニケーションを取ることは困難ですが、私の一歩として考え直すことが必要だと思いました。
異
文化交流体験では、日系人の方たちといろいろな話ができて楽しかったです。みなさんとても日本語が上手に話せて話をしやすかったです。英語での会話もほん
の少しできてよかったです。よく話した日系ブラジル人のルシアナさんは耳鼻科の先生でした。ブラジルの国立大学は入るのに無料ということに驚きました。し
かし日本とは違い、大学に行く人は少ないようです。
青年海外協力隊についても知りました。協力隊員は2年間発展途上国に行き現地の人々との人づくりに協力するそうです。私はいろいろな話を聞いてとても興味がわき将来、この協力隊員になりたいと思いました。
パネルディスカッションで学んだこと
三鷹高校 2年 渡邉大祐
新潟中越大地震のパネルディスカッションでは学ぶべき事がたくさんあった。
個
人、団体が被災者を“援助”するにあたっての援助のあり方、信じられない話だが、援助をしに来ているはずなのに自分の寝る場所、食事などを気にする人がい
るという。これではただのありがた迷惑になってしまう。物資の送り方についても、ダンボールに家庭で使わなくなったようなゴミを送ってくる、荷物の仕分け
をしていないこと等も実際にあるという。そうではなく、大人用なのか、小人用なのか、男用、女用、サイズ、生ものかそうでないか等、仕分けをして、さらに
中には何が入っているのかわかりやすいように段ボールの外に紙で書いて張っておく。現地で必要とされているものは何かを考える。こうしたことをふまえた
“物資を使う側の身になる”ことが初めて援助になるのだと思う。
“人
が人を助ける“というボランティアの原点。援助する側が被災者より上の立場になってしまってはボランティアではなくなってしまうと思う。同じ視点でなけれ
ば見えるものも見えなくなってしまうと思う。学者、技術者だけが専門性ではない。現地で何ができるかを考えることも専門性だと思う。
このパネルディスカッションを通じて、いろんな人にこのような意識を持って行動を起こしてほしいと思う。
今回のセミナーで得たもの
三鷹高校 2年 守本朋弘
今回のセミナーに参加したことで私はたくさんのもの(もちろんそれは目に見えないのだけれど)を得たと思う。聞いた話全てに賛成するでも感心するでもないけれど他の人の思っていることに対して、深く広く考える機会をもらったことを感謝している。
パネルディス
カッションでは中越大地震というケーススタディを使って、世界に出て私たちに何ができるか、という話だった。被災者のパネリストとファシリテーターの方
が、隣近所との交流が非常に少なくなってきていることを指摘して、震災時と関係なくコミュニケーションの大切さを強調していた。私も挨拶くらいはするよう
にしているけれど、近隣との付き合いなどがもどかしく感じるときもある。又、他人に対する恐怖感も交流が少なくなるひとつの原因であり、同時に大きな社会
問題なのだと思う。日本人の人格が日本人に疑われているような、そんな気がして、それはすごく悲しいことではないだろうか。例えば、電車に乗っているとき
に、知らない隣の人と話ができたら素敵だと思う。
NGO
の方とJICAの現役職員の方の話は現地での活動についてで、現地では様々な専門分野の職員が足りずこれからは様々な、他人とは違う専門分野を持っている
人が活きてくるということだった。これから私が大学に行って何かを専攻して、あるいは何かの資格を取っていく過程が活かされる場がある、これからしていく
受験勉強が報われるときがくるという再確認が、今後の忙しくなる生活を支えるモチベーションになると思った。
これからどういう自分になるかという岐路に立ってこういう機会にめぐり合えたのは非常に有意義なことだったと思う。改めて本当にありがとうございました。
異文化交流体験
三鷹高校 2年 鈴木麻由
とても短いあっという間の時間だったけど、これは「私の一歩」となった貴重な体験でした。この体験を通じて改めて実感したことがあります。
一
つ目は、一生懸命相手のことを考えて行動すれば、相手も一生懸命それに答えてくれるということです。そう感じたのは日系研修員の方々が私たちが楽しめるよ
うなラテンアメリカの伝統的なゲームを教えてくれたときでした。そのゲームはすごく単純で簡単なものだったけれど、研修員の方々が一生懸命考え、説明して
くれたことが私は何よりもうれしく、このゲームを楽しむことができたのではないかと思いました。もしこのゲームを日本人の友達とやったらどうでしょう。失
礼だけどたぶん盛り上がることはないでしょう。でもこやって違う国の人たちと一緒にやるとどうしてあんなに盛り上がったのでしょうか。それはやっぱりお互
いに理解しあいたい、近づきたいという思いがあるからだと思います。
二
つ目は、自分の語彙力のなさ、知識のなさです。研修員の方々に日本の伝統的な遊び「福笑い」を紹介するとき、私はとても戸惑いました。紹介するも何も、私
も「福笑い」で遊ぶのはその時が始めてだったのですから。自分の国の文化を自分自身がよく知らないのに、ましてそれを他国の人に紹介するなんて、なんだか
とても惨めな気持ちになってしまいました。それに研修員の方々に話しかけるとき、中学一年生のはじめの方に習ったような単語や文法が言葉にできなかったの
はすごくショックでした。
この二つの面を今回改めて感じたことはとてもいい経験になったと思います。この体験を通して、今後自分のやるべきこと、そして新たな目標が見つかったから。決して無駄な時間ではありませんでした。
異文化交流体験――これは「私の夢への一歩」となった、すてきな体験でした。